リチウムイオン電池の長寿命条件

リチウムイオン電池の長寿命条件

バッテリーにはサイクル寿命というものがあります。
何回充放電が使えるかというものです。

今回、これに関して、10年ほどリチウムイオン電池を扱ってきた経験と、国立研究開発法人科学技術振興機構の報告書(PDF)を元にアウトプットしたいと思います。

また、基本的にEサイクルのバッテリーセル(2020現在のVerではパナソニック製)を前提にしているので、LiFePoとかはまた別と思ってください。


Eサイクルのバッテリーセル  NCR18650B

1.保管時の電池の容量はどれくらいが適切か?

容量の半分くらいで保管するほうが良い。
保管時に満充電だと、約100日で容量が80%まで減る。

50~70%だと容量が90%に達するまで、220日かかる。

2.保管時・充放電時の温度はどれくらいがいいか?

温度管理は充放電ともにとても重要なキーワード

保管時の温度について

20℃程度で保管するほうが良い。
20℃だと、400日経過で100%程度だが、40℃だと、400日経過で94%、60℃だと、80%以下となる。
ただ、これは引用元の試験データーではLiFePoでのことだが、いろんなデーターを見ても、温度が低い方が劣化しにくい。

パナソニックのセルのデーターシート(PDF)から読み取ると、-20℃~50℃までとなっているので、-20℃まで良さそうだが、余裕を持って0℃程度と考えたほうがよい。

充放電時の温度について

温度34℃の場合、容量80%に低下するのに、1200サイクル要する。
46℃だと、500サイクル程度となる。

低ければ、良いのかという疑問が出てくるが、 0°以下での充電や保管は実際に劣化を早めたり、事故の原因にもなることがあるので、0℃以下での充電は行っては行けない。

リチウムイオン電池の開発・設計などを行っているベイサンのページにはそのメカニズムが書かれているので、ここでもシェアします。

リチウムイオン電池は低温(例えば0℃よりだいぶ下の温度)で充電した場合は、正極から出たリチウムイオンが負極に吸収されにくくなり、リチウム金属が析出しやすいといわれています。

http://www.baysun.net/ionbattery_story/lithium09.html

各社のリチウムイオン電池のデーターシートを見ると、だいたい使用幅は決まっていて、放電時は-20~50℃、充電時は0~45℃程度に集中している。

ICR18650データーシート(RSコンポーネンツ)

NCR18650B(http://www.batteryonestop.com/)

人間が過ごしやすい温度下で保管・充放電をしたほうが良いと考えたほうが安全であると考える。

3.電池を使用するときの容量帯はどこが適切か?

電池を使用する時にどのあたりで充放電を繰り返したほうがいいのかというデータ。
報告書では、ちょっと普段の使い方とは違う(10%幅での使用)ので、あまり、参考にならないかも。
45~55%の幅で使用したら、容量90%低下までに、2500サイクル。
容量60~70%程度、10~20%程度で使う場合は1000サイクル以下で容量90%程度に低下。

LFPでの実験だけを見ると、容量の違いによる劣化の差異は少なく、3000サイクル付近で容量80%となる。
こういうのを見ると、国産のLiFePoが出れば、欲しいな~と思う。

4.深度放電量

放電量30%程度で再充電する場合、容量80%に低下するまでに2000サイクル。
100%放電した場合は、容量80%に低下するまでに500サイクルになってしまう。
以上の結果の全体の使える容量を計算するには、放電量xサイクルすればいいので、100x500=50,000 30x2000=60,000となる。
ただ、ここにも記載があるけど、経験上、半分くらいで充電するのがいいかな~と思う。
https://kcszk.com/blog/archives/7580
上記の容量帯での実験もあるしね。

上の「電池を使用するときの容量帯はどこが適切か?」と合わせて、今までの経験としては、30~80%くらいの容量で使用し続けると劣化を感じなく現実的な使用量を確保できると思う。

3割くらいで充電し、満充電させないほうがより長くバッテリーを利用できる

4.放電レートはどれくらいが適切か?

放電レートが6.5Cだと、2Cの場合に比べて、80%にまで低下するのに、1000サイクル未満。0.5C,2Cでは1200サイクル以上。

この実験は単電池での放電レートの比較だから、組電池にした場合はもっと違う要素が絡んでくると考えている。

実際にBMSの性能にもよると思うが、直列つなぎで組電池を構成している場合、どの位置に来るかに寄って、バンク(セルの並列つなぎの集合体) ごとの劣化速度が違う。
一番端のマイナス極やプラス極に近いバンクが劣化が早いと実感しているので、放電レートはできるだけ小さい方がサイクル寿命に有利になることは間違いない。

5.まとめ

Eサイクルバッテリーを長寿命で使用したい場合に、 報告書からわかることを 当てはめると、以下のように言える。

保管する場合は、容量の半分程度で20℃程度で保管する。
放電させすぎず、かといって、すぐ充電するのでなく、50%(47V)くらいで充電する。
使用するときも暑い場所に駐車するなどをさける。
急激な放電を避けて、坂道などもゆっくり走ったり、足漕ぎをプラスしたりして、電池に負荷をかけない。
充電時の温度は人間が過ごしやすい温度、室温20~30℃程度で行う。

実際に使用する場合に、長寿命で考えるなら、人間が過ごしやすい温度で運用し、30~80%で使用すると良いと言える。

今後

今後、バッテリーを利用する上でこれらのことがユーザーに意識させることなく、BMSなどのカスタマイズにより実現できるようにしたい。

長寿命で使うには、電池の使用容量帯の幅が狭くなるので、そこをどうユーザーに提言していくかも考える必要がある。

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